試合の見どころ
今節は今シーズン最後の試合。過去3シーズン、ホームで行われる最終節はプレーオフ進出を懸けた激アツの場だったが、今回はすでに来シーズンのJ2残留が決まっている。その点は寂しさもあるが、モンテディオは現在、ひとつでも順位を上げるために走り抜けている最中だ。現在11位。9・10位との勝点3差を埋めるためには、今節の勝利が必須になる。この一戦へのモチベーションは1グラムも落としてはいない。
クラブは27日、横内昭展監督が引き続き、百年構想リーグ、26-27シーズンの指揮をとることを発表した。この夏以降、培ってきたサッカーは今後もほぼこの路線で続けられていくことになるが、同じメンバーで戦えるのはこの1試合のみ。
「最終節だろうが、いつも僕が言っているように、目の前の試合に全力を尽くして、勝利のためにみんなでいい準備をするというところ。昇格という目標はなくなりましたけども、選手はそこから目の前の試合、ひとつでも順位を上げるぞというものを目標にして、それまでとまったく変わらない、取り組む姿勢でここまで来てくれましたので、最終戦もその思いでというところです」(横内監督)
藤枝は“超・超・超攻撃的エンターテイメントサッカー”を掲げ、3シーズン目のJ2での飛躍を期して臨んだが、前期は2度の4連敗で下位に沈み、その後も連勝は2連勝が1回のみ。浮上のきっかけをつかめず、降格圏に近い順位で推移するこが多かった。第31節以降は白星から遠ざかり、いよいよ降格のリスクが迫ってきたことで、2節前のジェフユナイテッド千葉戦ではそれまでのスタイルから一転、割り切った戦い方で臨み、結果は1-1のドロー。勝点1を加えるにとどまったが、前節・サガン鳥栖戦もスコアレスドローで引き分け、J2残留を確定させた。今節は本来の攻撃的なスタイルをぶつけてくることが予想される。
モンテディオは前節、終了直前までリードしていた試合を落とし、今季初の3連勝は果たせなくなった。藤枝は前節の磐田ほど高さのある選手はいないため、前節のようにパワープレーを受けることは少ないが、押し込む展開になれば選手が頻繁にペナルティーエリア内に鋭く入り込んでくる。絶対にゴールを割らせない覚悟で、そして、何度でもチャンスを作り決めきる意気込みで、この貴重な90分は戦われなければならない。いいときだけでなく、苦しいときも追求してきた“山形一丸”を、いまこそ発揮する。
選手インタビュー



キープレイヤーポジション MF
身長 177cm
体重 71kg
生年月日 1993/5/5
出身地 神奈川
前所属 東京ヴェルディ

東京ヴェルディから移籍してきた1年目は、開幕2試合目で大怪我をし、そのシーズン中の復帰はならなかった。復帰した2年目は2シャドーで試合に出たり、出なかったり。怪我にも悩まされ、ポジションをがっちりつかんだとはいい難い状態だった。3年目も2シャドーはアタッカータイプの選手が起用されることが多く、途中からの出場も多かった。
その選手・南秀仁はモンテディオで9シーズンプレーし、今節、その最後の試合を迎える。出だしでややつまずいたようなモンテディオでのキャリアだったが、チームがボール保持をめざすスタイルに変わった20年途中にはサイドハーフや1.5列目でポジションをつかんだ。そして翌年にはボランチにコンバート。22年から3シーズンはチームキャプテンを務め、その間は毎シーズン、プレーオフに進出してきた。
「キャリアのなかでも一番いい、脂ののった時期をモンテディオ山形のためにプレーできたというのは、自分のなかではすごくよかったことだなあと思っています」
シュートという名前で、15年には東京Vで二桁ゴールも記録したが、モンテディオでは味方に点を取らせたり、味方を生かすプレーにこそよろこびを見出していた。
「ゴールを決めるよりもアシストが決まったときとか、アシストを決めた人の前にパスを出したときとか、ゴールを決めた人の笑顔を見るのが好きだった」
モンテディオに加入した17年の第2節、瀬沼優司の右からのクロスをワンタッチ、角度を付けてファーサイドの阪野豊史へ送ったプレーがモンテディオ初アシストになった。20年には1トップ・ヴィニシウス アラウージョとのコンビで、トップ下で多くのラストパスを供給。ゴールを決めたヴィニシウスが南を呼び寄せ、感謝の靴磨きをするシーンは印象的だった。先日の引退記者会見で自身のベストアシストに選んだのは、23年の第29節・藤枝戦の2点目。浮き球をノールック、ワンタッチで落としたこのプレーは、自身も「痺れました」と表現した。
今シーズンはプレシーズンに負った膝の怪我もあり、公式戦出場がなく、ほとんどベンチ外で過ごすなか、現役引退を発表するに至っている。しかし、ここへ来て本職のボランチが相次いで離脱。チームのピンチを救う形で、前節・磐田戦で今季初出場を果たした。棚ぼたではない。秋になり、ようやくコンスタントに全体練習に参加できるようになり、コンディションを上げてきたところで巡ってきたチャンスだった。サッカーの神様は、このファンタジスタのこれまでの振る舞いを見ていたのだろう。
「自分がいままでやってきたものを出す覚悟でいますし、最後にサッカーというものを楽しみながら、自分自身を表現できたらいいなと思います」
本当は永遠に始まってほしくない一戦。その笛は徐々に迫っている。

