
1年前、悔し涙を流した舞台に、モンテディオは再び戻ってきた。今回はJ1下位との“決定戦”がないため、08年、14年に続く3度目のJ1昇格まで、あと2つ。
初戦は「アウェイ」で「引き分けでも敗退」の条件付きだが、それもいつものこと。同じ条件で行われた過去3度のプレーオフ初戦を、モンテディオはすべてモノにしてきた。メンタル面で難しいのは、むしろ引き分けでも勝ち上がれる相手のほうだろう。その初戦の相手は、リーグ戦を4位で終えた清水エスパルス。
「我々が清水さんよりも順位が下ということを考えれば、勝たなければいけないんですよね。それはもしかしたら、我々にとってはディスアドバンテージになるかもしれない。でも結局、そういうゲームをここまで我々は5試合つなげてきたので、何かいまさらそこに対して、考え方を変に持っていく必要もないですし、特に僕は気にしてないです」(渡邉晋監督)
清水は自動昇格圏で最終節を迎えた。勝てば無条件で2位が確定し、自動昇格が決まる状況だったが、結果は水戸ホーリーホックと1-1のドロー。勝点1差のジュビロ磐田、東京ヴェルディがともに勝ったことで、最終順位4位でプレーオフに回ることになった。
清水にとっては不本意な試合に臨むことになるが、それでも、J2屈指の戦力であることは間違いない。乾貴士(10得点10アシスト)、チアゴ サンタナ(12得点1アシスト)、カルリーニョス ジュニオ(15得点3アシスト)だけでなく、ピッチに立つすべての選手が質の高いプレーが可能。決定機を含む多くのシュートシーンを作る力はある。
「本当に個々の能力が非常に高くて、それが融合されるとさらにパワーを増してくる。そういうようなチームであることは間違いない」と渡邉監督。ただし、付け入る隙も十分にある。
「サッカーはひとりでやるスポーツではない。我々は束になってかかればいいし、ひとりで抑えられないんだったらふたりで抑えればいいし、そういう連係・連動も含めて我々は戦ってきたので、そういったところも我々のよさを出せれば、しっかりと戦える相手だと思っています」(渡邉監督)
8連敗で一時降格圏に沈んでも、残り5試合となった時点で11位に順位を下げ追い詰められても、あきらめずにそこから這い上がってきた。タフなチームに成長したモンテディオだからこそ、しびれるシチュエーションは大歓迎だ。恐れるものは何もない。
ポジション MF
身長 177cm
体重 72kg
生年月日 1996/6/19
出身地 ポルトガル
前所属 Piast Gliwice
自身がゴールを決めてもクールにセレブレーションをキメるチアゴ アウベスが、大興奮でガッツポーズを繰り返したのは、第40節・群馬戦。自身のゴールではない。高橋潤哉の決勝ゴールをアシストした直後だった。カウンターでペナルティーエリア内まで持ち込んだのはチアゴ自身だったが、相手の懸命の戻りもあって打ちきれず。しかし、そこから冷静に判断を変え、高橋へのラストパスでチームを勝利に導いた。
「ゴールが決まった瞬間には、痛みとの闘いだったりとか、復帰してもなかなか思いどおりに日々のトレーニングや試合ができなったり、うまくいかないことだったり、日常でストレスが溜まることがたくさんあった。ひとりで住んでるからこそいろいろあると思うので、そのなかで少し感情的になった試合もあったんですけど、そういういろんな気持ちが、パスしてゴールが入った瞬間に頭のなかに蘇って、それで少し自分の肩から重みを外したような気持ちでした」
その翌節、アウェイ・いわき戦では、自身にもゴールが生まれる。0-1から3得点逆転の口火を切る1点目。コーナーキックの折り返しをボレーで蹴り込む、チアゴのレスポンス能力の高さを生かしたゴールだった。ただ、このゴールと同じようによろこびを表現したのは、自身のクロスからデラトーレが3点目のゴールを決めたときだった。
「ドゥグも含めて3人でお互いに乗り越えられるような言葉をかけ合ったりしていました。今日、デラが久しぶりにゴールを決めたことが自分自身も素直にうれしいし、必ずデラトーレはこの先、終盤に向けて自信をつけて、チームに貢献すると思います」
デラトーレは最終節も決勝ゴールを決め、2年連続プレーオフ進出のリーグ戦を締め括っている。
6試合連続ゴールなど、順調に得点を積み重ねたシーズンで、突如、長期離脱を強いられた。苦しいことが多く、チームにとっても本人にとっても望まない離脱だったが、戻ってきたのは、これまで以上にチームのため、チームメートのために戦う頼もしい選手だ。
そして何より、パフォーマンスは試合ごとに上がっている。あと2試合でどれくらい、キレキレのプレーやゴールセレブレーションを見せてくれるだろうか。大丈夫。この背番号10となら、きっと次のステージに進んでいける。