
前節・V・ファーレン長崎戦は、ラストプレーで失点し、1-1のドロー。勝利寸前で勝点が1に変わり、今季2度目の連勝もお預けとなった。終了間際の失点で勝点を落とすことは、いかにももったいなく、試合後のダメージも大きい。今後、同じ体験をしなくて済むように、最大限の準備と細心の試合運びが必要なことは言うまでもない。
その一方で、3-3-4へのフォーメーション変更後、チャンスの数が増えるとともに、守備の安定感も増してきている。見方を変えれば、追いつかれるのは、リードして終盤を迎えるからこそ。先制したら追加点を奪えるように、リードして終盤を迎えたらそこから失点を許さないように。勝ちきるための最善を尽くしたい。ここからしばらくは週1回のペースで試合が進むが、落とし込みや擦り合わせの時間が増えるなかで、精度もより高められるはずだ。
渡邉晋監督は「結果として逃しているものがあるのだとしたら、そこはすべて僕の責任」としながら、「選手にはもちろん、失敗から学んでほしいですけれども、臆病にならずにプレーできるように、背中を押してあげることも僕はしてあげたいなと思っています」と選手たちが勇気を持ってプレーすることを促している。
レノファ山口FCは志垣良監督の2シーズン目。昨シーズンは着実にポイントを積み重ね、中盤にはプレーオフ圏内をほぼキープしていたが、終盤は失点がかさみ6連敗するなど失速、最終順位は11位に終わった。そして今シーズンはここまで札幌、磐田の降格組から2勝を挙げているが、それ以外は未勝利で19位と苦しい状態に陥っている。現在も3連敗中。今節、年1回開催されるセービング陸上競技場でのホームゲームを機に、まずは降格圏脱出の一歩にしたいところだろう。
山口にはモンテディオでプレーした選手が多数在籍している。現在、モンテディオから期限付き移籍中の有田稜、横山塁はコンスタントに試合に絡んでいるが、今節は契約上、出場はできない。メインは途中出場ながら、小林成豪はこの2人とともにコンスタントに出場中。喜岡佳太は開幕戦直後の負傷で離脱中、前節までベンチ入りがない。キム ボムヨンは今季初出場を果たした第8節・愛媛戦で退場処分となった。以降、メンバー外が続いたが、ここ3試合はベンチに戻ってきている。
今節の会場は、維新みらいふスタジアムではなく、セービング陸上競技場。グラウンドのコンディション的に、パス主体のチームにはやや不利と見られている。まずは自分たちの土俵に引き込みたいが、相手の土俵になったとしても、どの局面でも上回る気迫は必須だ。そのうえで渡邉監督は「ちょっと戦い方を変えざるを得ない状況が出てくる可能性があるので、そういったところに対する備えというものは持っておかなければいけないかなと感じています」と話す。あとは状況を見ながら、チームでイメージを共有しながら立ち向かうのみだ。
ポジション DF
身長 186cm
体重 83kg
生年月日 1995/7/18
出身地 福岡
前所属 アビスパ福岡
早稲田大学ア式蹴球部からモンテディオ山形に加入したのが2018年。この年はリーグ戦34試合に出場し、ルーキーイヤーから主力として活躍することになるが、開幕戦には出場していない。このほか開幕戦で先発しなかったのは、福岡に完全移籍していた22年のみ。多くのシーズンで開幕先発の座をつかみ取ってきた。
ただし、モンテディオに復帰して以降はシーズンを全うできない状況が続いている。復帰した23年には開幕戦で筋肉系のトラブルが発生。その後は復帰も果たしたが、終盤にも試合中に負傷し、復帰後はベンチに入ったもののピッチに立つことはなかった。昨シーズンはコンスタントに出場を続けていたが、第16節を最後に試合出場だけでなく、ベンチ入りも果たせなかった。診断結果は右腓骨筋腱断裂。長期離脱の間にチームは連勝街道を走るが、筋力トレーニングを中心にじっくりと戦える体を養成していった。
そして今シーズン、開幕戦に先発で出場したものの、その後は最終ラインの数を増やす締めの場面で短時間起用される役割を担っていた。しかし、チームはフォーメーション変更に着手したことで、新たなチャンスが巡ってきた。3バックとなった第12節・富山戦に先発復帰すると、連戦で大幅な入れ替えとなった翌節・札幌戦を除いて先発出場を続けている。
チームは攻撃で相手ゴール前にできるだけ多くの人数をかけようとするなか、センターバックの攻撃参加もその重要な要素となっている。3-0で勝利した第14節・大分戦では、序盤から終盤まで、ボールを内側・外側を何度も駆け上がった。
前節・長崎戦では、3分の先制点につながるサイドチェンジが起点となった。4-4-2で構える相手の2トップ脇でボールを受けると、「スカウティングでサイドが空くという話があったので、立ち上がりは対角に蹴ろうと思っていたので、いいボールが蹴れてよかったかなと思います」
前節は最後の最後に失点したが、フォーメーション変更後は守備も安定し、複数失点も喫していない。この安定感の維持が今後の浮上へのカギになる。あとは熊本自身が大きな怪我に見舞われることなく、シーズンを全うするだけ。攻守にタフさが求められるポジションだが、見えないところで積み重ねた努力が、ここで生きてくる。